第1回企画展「The Sleeper Train~寝台列車の軌跡~」
開催期間 | 2016年10月8日(土)~2017年1月31日(火) |
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開催場所 | 本館2F 企画展示室 |
はじめに
夜に眠りながら長距離移動ができる「寝台列車」。
日本では明治期から寝台車の歴史が始まり、昭和中期にはブルートレインの愛称で親しまれた寝台特急の全盛期を経て、100年以上たった今では、旅を楽しむための列車に寝台車が連結されて活躍しています。
当館の第1回企画展「The Sleeper Train~寝台列車の軌跡~」では、日本における寝台列車の歴史や、当館で保存展示している寝台車両などについてご紹介しました。
企画展の内容
1. 日本の寝台列車の始まり
1889(明治22)年、官設鉄道の東海道線全通で運行開始となった新橋―神戸間を約20時間で結ぶ直通列車が、日本初の日付をまたいで運行される夜行列車となりました。私鉄では、日本鉄道が1891(明治24)年から上野ー青森間(現在の東北本線)を約26時間30分で結ぶ直通列車の運行を開始しました。
1900(明治33)年4月には、私鉄の山陽鉄道(現在の山陽本線)が急行列車に一等寝台を連結し、運行を開始しました。これが日本初の営業用寝台車で、車内に食堂と寝台を併せ持つ合造車となっており、寝台部分はプルマン式の開放式(上下二段・定員16名)で、内装は豪華な造りとなっていました。
2. 明治後期から大正、そして昭和へ
官設鉄道は1900(明治33)年10月、アメリカとイギリスから寝台車を輸入し、東海道線の急行列車で一等寝台の運用を開始しました。その後、各地で運用されていきましたが、当時の寝台車は高額な料金を必要とする一等・二等車のみで、庶民には高嶺の花でした。
1931(昭和6)年2月、三等寝台の車両が登場します。世界恐慌による不況で利用減少した寝台車の需要喚起として導入され、多くの利用がありました。これにより、東海道・山陽本線以外の一等寝台は1934(昭和9)年に廃止され、1941(昭和16)年には三等寝台も廃止となりました。
3. 終戦直後の寝台車
終戦直後の寝台車は、連合軍(進駐軍)が使用する専用列車に限られました。1945(昭和20)年の終戦後、連合軍は部隊輸送用の専用座席車や貨車などと共に寝台車の手配も要求し、日本側は三等車を改造した車両を用意しました。また、軍の出張や休暇旅行で連合軍関係者が利用する特急列車などにも、整備が行き届いた寝台車が連結されていました。
その後、1948(昭和23)年に連合軍の指令で製造された「マイネ40形」は、外国人優先ではありましたが、運行の三日前に空席があれば日本人でも有料で利用することが可能となりました。そして、1949(昭和24)年には二等寝台、1955(昭和30)年には三等寝台が復活しました。
4. 三等級制から二等級制への移行
1955(昭和30)年、国鉄はそれまで三等級制(イ・ロ・ハ)だった寝台車の等級を二・三等の二級制(ロ・ハ)としました。これは1950年代から伸びつつあった航空機利用に対抗するためで、高額だった一等寝台の設備が二等寝台の値段で利用できることで、寝台車の利用促進を図るためでした。しかし、これにより二等寝台の設備に大きな差が生じたため、設備ごとに車両をAからCまでのクラスに分け、それに応じた値段が設定されました。
5. 様々な客車
寝台特急「あさかぜ」の登場
~ブルートレインの時代~
1958(昭和33)年10月1日、日本ではじめて全車両が同じデザインで統一された客車による寝台列車「あさかぜ」(東京-博多間)の運行が開始され、青い車体の寝台列車「ブルートレイン」の歴史が始まりました。
使用された20系客車は、それまでの寝台列車よりも格段に良い乗り心地となったため「走るホテル」とも呼ばれました。その後、1971(昭和46)年には14系客車が、1973(昭和48)年には24系客車が登場し、居住性や作業効率の向上が図られ寝台列車の一時代を築きました。
世界初の寝台電車~581系電車~
1967(昭和42)年、昼は座席車、夜は三段式の寝台車として運用できる世界初の寝台電車・581系電車が開発され、大阪―博多間を結ぶ寝台特急「月光」と新大阪―大分間を結ぶ「みどり」として運行が開始されました。当館で保存・展示しているクハネ581形35号車は1968(昭和43)年に製造され「月光」「みどり」で活躍した後、最後は大阪―新潟間を結ぶ急行「きたぐに」として2013(平成25)年まで45年にわたって活躍しました。
JR発足後に登場した新たな存在
~北斗星 / トワイライトエクスプレス /
サンライズ瀬戸・出雲 / カシオペア~
1988(昭和63)年、青函トンネルの開通に合わせて登場した「北斗星」(上野ー札幌間)を皮切りに「トワイライトエクスプレス」(大阪-札幌間)や「サンライズ瀬戸・出雲」(東京-高松・出雲市間)、「カシオペア」(上野―札幌間)が運行を開始しました。
各列車がそれぞれ趣向を凝らし、車両を特別に仕立てサービスを充実させることで、従来の寝台列車とは異なる新たな存在感を放つ列車となりました。
6. これからの寝台列車
交通の速達化や多様化が進展する以前の長距離移動手段は鉄道が主体であり、寝台列車は主役でした。1960~70年代に寝台列車は全盛期を迎えましたが、その後の需要は次第に減少していきました。その一方で、JRグループ各社発足後は、“鉄道による旅を楽しむ”ことを目的とする豪華列車が脚光を浴び、一時代を築きます。そして現在は、設備が豪華なだけではなく、“観光地をめぐる運行路線”や“より上質なサービスの提供”によって旅を楽しめる列車が登場しています。目的地までの効率的な移動手段であった寝台列車は、乗車すること自体が目的となる新しいタイプの列車へと変貌を遂げています。
- 本文の内容は、企画展「The Sleeper Train~寝台列車の軌跡~」解説シートを再編集したものです。
開催中の見どころ
実物の迫力!
展示室を5つのパートに分け、テーマごとに寝台列車を紹介しました。展示資料の総数は約200点で、ヘッドマークをはじめ、部品やアメニティ、パンフレットなど、そのほとんどが実際に使用されていたものでした。また、実物の1/80サイズのHOゲージ模型を用いて各時代の寝台列車を編成で展示しているコーナーも人気となりました。
実物車両にヘッドマーク!
期間中、当館の展示車両のうち寝台列車として活躍していた車両に、お客様から多数リクエストをいただいていた「ヘッドマークの取り付け」を行いました。迫力ある姿をたくさんご撮影いただきました。