第3回企画展
「鉄道遺産をたずねて ~遥かなる時を越えてきた生き証人~」

開催期間 2017年10月14日(土)~2018年1月28日(日)
開催場所 本館2F 企画展示室

はじめに

技術の積み重ねにより発展してきた鉄道。1872(明治5)年の開業時より、時代や地域などに合わせて車両や施設、設備が作られてきました。当館の第3回企画展では、車両や各地に残る歴史的な建築物、土木構造物などを中心にJR西日本管内にある”鉄道遺産”について紹介しました。

企画展の内容

0.鉄道遺産とは

本展では、国鉄・JR西日本が指定した鉄道記念物および準鉄道記念物、JR西日本が指定した登録鉄道文化財をはじめ、各地に残る鉄道の文化財を”鉄道遺産”としました。その中には重要指定文化財・登録有形文化財(ともに文部科学省)、近代化産業遺産(経済産業省)、選奨土木遺産(土木学会)、機械遺産(日本機械学会)、市指定有形文化財(京都市、敦賀市)も含まれ、それぞれが持つ歴史的・文化的・技術的価値が注目されています。

1.鉄道車両 ~技術の結晶~

鉄道車両は、蒸気・軽油・電気などを動力源として走ります。1872(明治5)年の鉄道開業時に蒸気機関車がイギリスから輸入され、当初は輸入車両が中心でしたが、次第に国産化が進められていきました。戦後になると、石炭から石油へ移行したエネルギー革命の影響や国鉄の動力近代化計画などにより、蒸気機関車中心の編成からディーゼル機関車・ディーゼルカー・電気機関車・電車への移行が進められました。1964(昭和39)年には東海道新幹線が開業し、鉄道の高速化として世界を驚かせました。
鉄道車両は、輸送量の確保や速達性・快適性を追及しながら技術的に常に進化しています。

国鉄初の特急用ディーゼルカーであるキハ81形を使用した特急「はつかり」【1968(昭和 43)年ごろ】

瀬田川橋りょう付近を名神高速道路と併走する開業当初の0系新幹線電車【1964(昭和39)年ごろ】

2.鉄道の駅 ~地域の顔~

鉄道の駅は人々が行きかう地域の玄関口であり、交通の集散点でもあり、その地域の顔として象徴的な建物となっています。全国には木・レンガ・鉄筋コンクリートなどさまざまな素材で建てられた駅舎があります。かつて大都市のターミナル駅を除き、ほとんどが木造や木骨モルタル建築で建設されたといわれます。1923(大正12)年9月の関東大震災以後は、鉄筋コンクリート造の建築物が急速に普及していきました。また、大正期には建物の老朽化も進み、旅客・貨物数が増大したことにより、機能の充実を目的として改良工事が進められました。とくにターミナル駅では、旅客・貨物数の増大に伴い客貨の分離が検討され、同時に線路の高架化・複線化も進められました。

駅改良工事時に高架化された二代目三ノ宮駅建設工事風景【1935(昭和10)年4月】

多くの社寺が存在する奈良の玄関口に位置する和洋折衷様式の二代目奈良駅舎【1934(昭和9)年竣工】

3.扇形車庫 ~SL時代のシンボル~

機関庫は、列車を牽引する機関車の車庫であると同時に、整備・検査・修繕などを行う施設です。その中心施設である車庫には、矩形(長方形)・円形・扇形の3形状があり、明治時代には矩形が主流でした。のちに車両数が増加すると、梅小路や米原などで転車台を中心に扇状に車庫を建てる扇形車庫が採用され、大正・昭和期の主流となりました。
鉄道開業当初は主要駅に隣接し設置されていましたが、明治後期から大正期になると操車機能の分離のため、主要駅から少し離れた場所に設置されました。

吹田扇形庫工事【1922(大正11)年12月8日】

旧津山扇形機関庫

4.トンネルと橋りょう ~広がる鉄道網~

全国の鉄道網の骨格が形成されると同時に、山間部や河川を渡る多くのトンネルや橋りょうが造られていきました。輸送量の増大は、駅の改良と共に各線の線路改良を促し、複線化や曲線・勾配改良、トンネルや橋りょうの改良工事も盛んに行われました。
また、同時期に構造材料や新しい施工技術の開発なども著しく進歩しました。1914(大正3)年に「鉄筋コンクリート橋梁設計心得」が制定された頃よりコンクリート建造物の建築が本格的になっていきます。特に1923(大正12)年の関東大震災を契機として耐震性も重視されるようになり、昭和初期の高架橋などの各種構造物には鉄筋コンクリートが用いられました。

石屋川トンネル工事【1919(大正8)年】

本邦唯一と称せらるゝトレッスル式の余部大鉄橋

開催中の見どころ

知ってる!なにこれ?興奮の資料がたくさん!

展示室を4つのパートにわけ、鉄道模型や橋りょう銘板をはじめ、駅の照明具やレリーフ、絵はがきなど、目にしたことのある有名な資料からこれまであまり注目されなかったものまで約100点(写真、映像などを除く)展示しました。また、トンネルについての紹介映像も好評でした。

まるで○○?心躍る会場!

企画展示室内に、ミニサイズのトンネルや扇形車庫、橋りょうを制作しました。展示をたどる中でトンネルをくぐったり、橋を渡ったりしているうちに、まるで自分が鉄道車両になったようだと好評でした。また、”建築”を扱う展示スペースには、美しく歴史的にも価値のある資料が並び美術館みたいといったお声もいただきました。

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